書籍紹介

知識の表現と高速推論

石塚 満

丸善、296ページ、\4,326、(1996年8月発行)

ISBN 4-621-04206-8 C3355

内容

知識処理分野の本は既に何冊かあるので、推論の重要な要素である高速化の観 点を強調し、関連する手法に焦点を当てて記したのが本書である。知識表現・ 推論の基本をカバーし、かつ高速推論の関連技術については従来にない部分ま で踏み込んで記している。これまでの知識表現・推論法とされてきた手法だけ でなく、少し周辺領域にまで眼を広げ、重要と思われる関連分野まで記してい る点も普通の知識処理の本と幾分異なっている。

第6章「仮説推論とその高速推論メカニズム」は特論的であり、筆者のグルー プが行なってきた研究を中心に、他章より幾分詳しく記している。

-------(情報処理 1997年1月号に柏野邦夫氏による書評あり)


目次

第1章 序論
  1. 人工知能と知識処理研究の流れ
  2. 手続き的知識表現と宣言的知識表現
  3. 知識表現/推論法のマップ
第2章 基礎的探索手法
  1. 状態空間と木探索
  2. 縦型探索(深さ優先探索)と横型探索(幅優先探索)
  3. 山登り法
  4. 最良優先探索
  5. A*アルゴリズム
  6. 分枝限定法
  7. 反復深化
  8. ビーム探索
  9. AND/ORグラフ探索
  10. ゲーム木探索
  11. 確率的探索法
    1. シミュレーティッドアニーリング法
    2. 遺伝的アルゴリズム
第3章 知識ベース型システムのための知識表現法と推論法
  1. 知識表現と推論法の要件
  2. プロダクションシステム
  3. 黒板モデル
  4. 意味ネットワーク
  5. フレーム
  6. オブジェクト
  7. 代表的知識表現法の位置づけ
  8. ATMS
第4章 論理の表現と融合原理

  1. 命題論理
  2. 1階述語論理における整合論理式による知識表現
  3. 節形式による知識表現
  4. エルブラン領域
  5. 融合原理による推論
  6. 融合の戦略
  7. 論理の決定問題と計算量
  8. 知識表現システムとしての特徴
第5章 関係の深い表現・推論法
  1. 制約充足問題(CSP)
    1. 制約充足問題の定義
    2. 局所整合アルゴリズム
    3. 木探索
    4. ルックアヘッド
    5. 併合法
    6. バックトラックなし木探索が可能なCSPの部分クラス
    7. 局所制約伝播
    8. CSPと命題論理式の表現の相互変換
  2. 演繹データベースの手法
    1. トップダウンとボトムアップ推論
    2. マジックセット法
    3. Query/Subquery(QSQ)法
  3. 整数計画法
    1. 線形計画の単体法
    2. 整数計画法
    3. 0-1整数計画問題の部分列挙法
    4. 0-1整数計画問題の近似解法---掃出し補数法
第6章 仮説推論とその高速推論メカニズム
  1. 高次人工知能機能と高速推論
  2. 仮説推論
    1. 論理に基づく仮説推論の原理
    2. 診断型問題への適用例
    3. 設計問題への適用例
  3. 推論パスネットワークによる高速仮説推論法
  4. 述語論理知識を扱う高速仮説推論法
    1. 演繹データベースの手法の利用
    2. 最適解の効率的推論法
  5. 類推による高速化
    1. 一般の類推メカニズム
    2. 類推による高速仮説推論法
  6. 経験に基づく学習による高速化
    1. 説明に基づく学習
    2. 仮説推論への適用
  7. 知識コンパイル法による高速化
    1. 論理式のPrime Implicatesへのコンパイル
    2. 仮説推論知識ベースの部分コンパイル
  8. 0-1整数計画法の近似解法の適用による準最適解計算の 多項式時間仮説推論法
  9. ネットワーク化バブル伝播法
  10. 6章のまとめ
第7章 むすび

付録A 計算量理論の概要

付録B 命題ホーン節充足可能性判定の線形時間アルゴリズム